1. リチウム電池とは?

リチウム電池とは、負極にリチウムを利用した電池の総称です。自己放電が少なく、高電圧・長寿命という特徴があり、産業機器や医療機器、計測機器など幅広い用途で利用されています。本記事では、主に産業用途で広く使用されるリチウム一次電池を中心に、その特徴や種類について解説します。
リチウム電池の定義
リチウムは周期表で最も軽い金属元素です。また、電池材料として優れた特性を持つことから、高性能な電池の材料として広く利用されています。
リチウム電池には、充電できない「リチウム一次電池」と、充電して繰り返し使用できる「リチウムイオン電池(二次電池)」があります。名前が似ているため混同されることがありますが、用途や特性は大きく異なります。
リチウム電池の歴史
リチウム電池の開発は1950年代、NASAが宇宙開発や軍事用途向けに始めました。長期間にわたって安定した電力供給が求められる過酷な環境向けに開発が進められたのです。
その後、1975年から1985年にかけて日本で開発ブームが起こり、民生・産業用途への応用が広がりました。現在では、ガスメーターや水道メーター、火災報知器、計測機器、医療機器など、長期間の安定動作が求められる機器で広く使用されています。
基本的な仕組み
電池は、化学反応によって電気エネルギーを生み出す装置です。リチウム電池の場合、以下のような基本構造になっています。
- 負極(マイナス極):リチウム金属またはリチウムを含む材料
- 正極(プラス極):二酸化マンガン、塩化チオニル、ヨウ素など(種類による)
- 電解液:リチウムイオンを移動させる媒体
- セパレーター:正極と負極が直接接触しない絶縁材
放電時には、負極からリチウムイオンが電解液を通って正極へ移動し、その際に電子が外部回路を流れることで電力が供給されます。充電式(リチウムイオン電池)の場合は、この反応を逆向きに起こすことで充電が可能になります。
2. リチウム電池の特徴3つ
リチウム電池が広く採用されている理由は、自己放電の少なさ・高電圧・広い動作温度範囲という3つの特徴にあります。
特徴1:自己放電が少ない
リチウム一次電池は自己放電が少なく、長期間保管しても容量が低下しにくいことが特徴です。
自己放電とは、電池を使わずに保管しているだけで自然に容量が低下してしまう現象のことです。リチウム一次電池はこの自己放電が非常に少なく、長期間の保管後でも高い容量を保持できます。
特徴2:高電圧
リチウム電池は1本あたり3V前後の高い電圧を出力できます。
通常のアルカリ電池やマンガン電池の公称電圧は1.5Vですが、リチウム電池はその約2倍にあたる電圧を1本で出力できます。そのため、複数本を直列に接続していた機器でも、少ない本数で同等の電圧を確保できます。
特徴3:広い動作温度範囲
リチウム電池は低温から高温まで安定して動作しやすいことが特徴です。
通常のアルカリ電池は0℃以下になると性能が大幅に低下する傾向がありますが、リチウム一次電池の中には、−55℃〜+85℃程度の広い温度範囲で使用できる製品もあります。
3. リチウム一次電池の種類

リチウム一次電池には複数の種類があり、それぞれ特性や用途が異なります。用途に応じて適切な種類を選ぶことが重要です。
二酸化マンガンリチウム電池
二酸化マンガンリチウム電池は、リチウム一次電池の中でも最も広く普及しているタイプです。
安定した電圧特性と扱いやすさを兼ね備えており、メモリーバックアップ、センサー機器、計測機器など幅広い用途で利用されています。コイン型(CR2032など)や円筒型(CR123A、CR2など)といった汎用的な形状で流通しているのも特徴です。
塩化チオニルリチウム電池
塩化チオニルリチウム電池(Li-SOCl₂)は、長寿命・高エネルギー密度・広い動作温度範囲を特徴とするリチウム一次電池です。
製品によっては−60℃〜+85℃という幅広い環境で使用できるものもあり、自己放電率も20℃保管で1年後1%未満と非常に低いことが報告されています。こうした特性から、ガスメーターや水道メーター、火災報知器、遠隔監視機器など、長期間メンテナンスが難しい屋外設置機器で広く採用されています。
ヨウ素リチウム電池
ヨウ素リチウム電池は、高い信頼性が求められる医療機器向けに使用されることが多い電池です。
電解液が固体であるため液漏れのリスクが少なく、自己放電もほとんどないという特徴があります。安定した電圧を長期間維持できることから、心臓ペースメーカーなどの埋め込み型医療機器をはじめ、長期信頼性が重視される精密機器に採用されています。
その他のリチウム一次電池
その他にも、フッ化黒鉛リチウム電池(エネルギー密度が高く、軍事用途や特殊用途向け)や、亜硫酸リチウム電池(大電流放電に対応)など、用途に応じた特殊なタイプのリチウム一次電池があります。
4. リチウムイオン電池との違い
リチウム一次電池とリチウムイオン電池は名前が似ていますが、用途や特性は大きく異なります。両者の主な違いは以下の通りです。
| 項目 | リチウム一次電池 | リチウムイオン電池 |
|---|---|---|
| 充電 | 不可 | 可能 |
| 主な用途 | メーター・バックアップ電源・センサー機器 | スマートフォン・ノートPC・EV |
| 自己放電 | 少ない | 比較的多い |
| 長期保管 | 向いている | あまり向いていない |
| 特徴 | 長寿命・高信頼性 | 繰り返し使用可能 |
リチウム一次電池は、交換頻度を抑えたい機器や長期間メンテナンスが難しい環境に適しています。一方、リチウムイオン電池は、頻繁に使用する機器や大容量の電力が必要な機器に向いています。
5. リチウム電池のメリット
前章までの特徴は、機器を設計・運用する側にとって具体的な利点につながります。ここでは導入する側から見たメリットを整理します。
保守の手間とコストを抑えられる
電池交換の頻度が下がるため、保守作業の負担とランニングコストを抑えられます。
ガスメーターや水道メーター、遠隔監視機器のように、設置場所へ出向く必要がある機器では、交換1回あたりの作業コストが大きくなります。交換周期が延びるほど、この負担を減らせます。
機器を小型化できる
必要な電圧を少ない本数で確保できるため、電池を収めるスペースを小さくできます。
加えて、リチウム電池は体積あたり・重量あたりに蓄えられるエネルギー量が大きいため、同じ容量でも小型・軽量にまとめやすくなります。限られたスペースに電源を搭載する計測機器やセンサー機器、医療機器で採用される理由のひとつです。
設置場所の制約が少ない
屋外や温度変化の大きい環境にも設置できるため、機器の設置場所を選びにくくなります。
寒冷地の屋外設備や、高温になりやすい工場内の機器など、一般的な電池では対応が難しい環境でも使用できる製品があります。電源の確保が難しい遠隔地でも、長期間の運用が可能です。
6. リチウム電池のデメリット
リチウム電池には多くのメリットがある一方で、以下のような注意点もあります。
価格が高い
アルカリ電池やマンガン電池と比較して、初期コストが高くなる傾向があります。
一次電池は再利用できない
リチウム一次電池は使い切ったら再使用できないため、頻繁に使用する機器では経済的でない場合があります。
廃棄時の注意が必要
リサイクルが必要な製品が多く、自治体によっては一般ゴミとして廃棄できない場合があります。お住まいの地域のルールに従って廃棄してください。
誤った使い方によるリスク
充電や過放電、高温環境での使用・保管など、誤った取り扱いをすると液漏れや発火の原因になることがあります。
7. よくある質問
Qリチウム電池とリチウムイオン電池は何が違いますか?
リチウム一次電池は充電できない使い切りタイプの電池です。一方、リチウムイオン電池は充電して繰り返し使用できます。用途や特性も異なるため、目的に応じて使い分けることが重要です。
Qリチウム電池の特徴は何ですか?
リチウム電池の主な特徴は、自己放電が少ないこと、高電圧を出力できること、そして広い温度範囲で使用できることです。これらの特性から、産業機器や医療機器、計測機器などで広く利用されています。
Qリチウム一次電池にはどんな種類がありますか?
代表的な種類として、二酸化マンガンリチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、ヨウ素リチウム電池があります。それぞれ特性や用途が異なるため、使用環境に応じた選定が重要です。
Qリチウム電池は充電できますか?
リチウム一次電池は充電できません。無理に充電すると故障や事故の原因になる可能性があります。充電して繰り返し使用したい場合は、リチウムイオン電池などの二次電池を選ぶ必要があります。
8. まとめ
リチウム電池は、自己放電が少ない、高電圧、広い動作温度範囲という3つの特徴を持つことから、産業機器や医療機器、計測機器など幅広い分野で利用されています。
リチウム一次電池には、二酸化マンガンリチウム電池(汎用性に優れる)、塩化チオニルリチウム電池(長寿命・広温度範囲)、ヨウ素リチウム電池(高信頼性・医療用途)などの種類があり、用途に応じて使い分けられています。
充電できないリチウム一次電池と、充電して繰り返し使用できるリチウムイオン電池(二次電池)は名前が似ていますが、特性や用途が大きく異なります。導入を検討する際は、使用環境や交換頻度、必要な性能に応じて適切な種類を選ぶことが重要です。
監修者プロフィール
リチウム電池.COM編集部(森松産業株式会社)
リチウム一次電池の専門商社として、二酸化マンガン・塩化チオニル・ヨウ素リチウム電池など国内外の製品を取り扱っています。
廃番品の代替品提案や、用途・使用条件に応じた選定のご相談に対応しています。

